刹那×アレルヤ
七話~八話にかけて
エタノールの香りと共にひんやりとした感触がした。
「…っ…」
「あっごめんっしみちゃった?」
切れてたんだね。ごめんよと大げさに
謝罪をしながらアレルヤは柳眉を下げた。
あの後どこかイラついた様子のロックオンは
「解散だ」
と告げて一人背を向けた。
刹那を睨み付けていたティエリアも各自待機という
命令には従うようで、鼻をならしてからヴァーチェの
元へ帰っていった。
そして夜の砂浜に残されたのは刹那とアレルヤ。
メカニックのイアン・ヴァスティと海水に濡れたハロだった。
「いや~ひやひやしたぜ」
お前らはいつもあんな感じなのか?張り詰めていた
空気を吐き出すようにイアンが言ったのをアレルヤは
「いえ…そうじゃないんです」
と曖昧に答えている。
きっとみんなミッション後で気が立っていたんですよ。
困ったように笑うアレルヤにイアンは肩をすくめた。
「それじゃおれもメンテナンスに戻らせてもらうぜ」
アレルヤお前さんのキュリオスもしっかり整備しとくぜ。
「よろしくおねがいします」
手を挙げて立ち去るイアンにアレルヤは丁寧に腰を下げた。
これで砂浜には二人と一匹となった。
「刹那だいじょうぶかい?」
痛かったよね。そういってアレルヤは刹那と目線を合わせた。
身長の高いアレルヤは少し腰を屈ませることになる。
「ああ。」
ぶっきらぼうに答えると
そう、よかった。といいながら目元を緩ませる。
俺はアレルヤのこの目が苦手だ。
アレルヤのこの目で微笑まれると心臓の奥がむずがゆいような
奇妙な感覚が走る。
「砂がついちゃたね」
ロックオンに殴られた時についたのだろうアレルヤが言うとおり
刹那のパイロットスーツには細かい砂が付着していた。
「うごかないで」
自分で振り落とそうと手を挙げたが、いつの間にか後ろに回ったアレルヤ
がせっせと砂をはたき落としている。
周りには波のさざめく音だけが響いている。
「礼をいう」
黙々と砂を払っているアレルヤに向かって刹那は口を開いた。
「?いいよ別に」
見えないが、刹那はアレルヤが小首を傾げるのがわかった。
「さっきのことだ」
刹那とティエリアが一触即発の雰囲気になったとき、アレルヤが己を
庇ったことを指している。
あのままではティエリアは確実に引き金を引いていただろうし、刹那自身も
エクシアを降ろされるぐらいなら、反抗するつもりだった。
訓練されている二人が争えば二人とも怪我ではすまなかっただろう。
しかしアレルヤはティエリアを説得して、銃を降ろさせた。
ああ、と思い出したようにアレルヤは相槌をうった。
綺麗になったよ。そういって立ち上がり再び目線を合わせる。
「ぼくも、命令違反をしたからね、おあいこ。」
でもね、僕は間違ったことをしたとは思っていなんだ。
そういえばあの時、刹那も助けてくれたよね
「こちらこそありがとう…これもおあいこだね」
刹那も後悔はしてないよね、理由はしらないけど…・。
命令違反をするのも覚悟がいるものね。
「こんなことティエリアに聞かれたらまた怒られちゃうな」
ぼくが言ったこと皆には秘密だよ。
そういって人差し指を口元へもっていく。
「ああ」
こくりと頷くとアレルヤは満足そうに微笑んだ。
殴られちゃったところ冷やさなきゃね
「刹那のコンテナに救急セットあるかな?」
そういって刹那の手を引くアレルヤに、
刹那はおもわず驚いた表情をしてしまった。
「腫れちゃったら大変だよ。せっかくかっこいいのにね」
「は?」
かっこいい…誰がだ?
「ロックン、ツメタイ!ミンナ、ツメタイ!」
ハロ、カナシイ!!!
水滴を撒きながら跳ねるオレンジ色の球体をアレルヤは抱き上げた。
「ふふ、ハロも助けてくれたよね。ありがとう」
ハロも綺麗にしないとね。
アレルヤは手をつないだままエクシアのコンテナに向かう。
「セツナ、アレルヤ、ナカヨシ!!ハロモ、ナカヨシ!」
そうだね、みんな仲良しがいいね。歌うようにアレルヤはAIと会話をしてる。
「刹那?どうしたの顔が赤いよ」
熱が出てきたのかな、早く冷やさないと。
すこし小走りになったアレルヤに引きづられるように刹那は砂浜を後にした。
この記事にトラックバックする