五話後
ティエリア+アレルヤ(ハレルヤ)
種の人じゃないよ^^
ジブリールの獣
ティエリア・アーデはひどく憤慨していた。
これは、
絶対的な意思を覆されたことへの怒りでもあった。
そして何よりも与えられたミッションをいとも簡単に捨て去り、
人命救助を率先したガンダムマイスターへの憎悪にも似た
怒りが彼をその元凶へと足を向けさせた。
「英雄にでもなったつもりか。アレルヤ・ハプティズム」
ヘルメットを外し、コンテナから降りてくる男に言い放つ。
我知らず、語気が荒くなったのことにティエリアは気づかない。
「ティエリア……」
ミッションを狂わせた本人は相変わらず宙に浮いたような
声音で俺の名前を呟く。
「そんなつもりは無いよ。ただ僕は見ていられなかったんだ」
抗うことも出来ずにただ最期のときを迎える人々を。
巨大な宇宙の理に対してまったくの無力だったかつての自分たちを。
(ああ、ハレルヤぼくたちも神様に祈ったね)
死にたくない!
「つまり君は自分の過去を投影し、
ガンダムマイスターとしての職務を放棄したわけか。」
それはただの自己満足でしかない。
「そうだね、でも僕は…」
アレルヤは言いよどんでいる。
薄い唇を一度噛んで彼は口を開いた。
「僕は間違ってない」
そう言い切った瞬間俺は手を振り上げていた。
「ちょっと、何してるの!」
スメラギ・李・ノリエガが現われ、
すぐさま俺とアレルヤを引き離す。
「……っ……」
彼女が現われたことで、息を吐いたのは俺のほうが先だった。
アレルヤは口元を押さえている。
避けようと思えば避けれたはずだが、彼は避けなった。
皮膚が裂けたのか、指の隙間からぽたりと紅い滴が落ちる。
「アレルヤ、だいじょうぶ?」
「えぇ、そんなことより…すみませんでした」
僕の判断で皆さんに迷惑をかけてしまって。
「分かってるのならいいわ。でも罰はうけてもらいます。」
「はい」
「営倉に入ってもらいます、期限は…あなた次第よ」
「分かりました」
「ティエリアもそれで、いいわね」
念を押すように
「決定事項なら従うまでです」
そういって踵を返した俺にアレルヤが話しかけた。
「ティエリア、僕はぼくに出来ることをしたいんだ。」
ソレスタルビーイングの行動で理不尽な運命に駆られる人がいなくなるなら、
僕はガンダムマイスターとして引き金を引くことが出来る。
そう言って口を閉ざしたアレルヤに振り向くこともせず
俺の脚は進んでいく。
角を曲がりきった所で俺はずっと握ったままだった拳をほどいた。
彼を殴った時、普段は隠れている眼が、みえた。
ぎらりと金色に光った獣のようなあの眼には
殺してやる!!!
ティエリアに対する明確な殺意が映っていた。
あの眼なら二百人どころか世界中の人間を虐殺することだってできるだろう。
あれはアレルヤ・ハプティズムとはかけ離れすぎている。
首筋から冷たい汗が流れ落ちた。
あれは、なんだ?
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